例えば、こんな始まり方
LIKE or LOVE?
「あのさ・・・」

「ブロッサム」からの帰りにふいに純一が言った。

「さっきは、あんなこと言ったけど。僕、君のことは『好き』なんだ。でも、LIKE か LOVEか正直分かんなくてさ」

ぽりぽり。頭を掻いて。

「つきあえたらいいな~、って思いであんなこと言った。けど・・・僕にはまだ話せないことがあって」

「いいよ。話したくなったら、話してくれたら。私も、あなたのこと、LIKE か LOVEか分かんないけど、好意はもってる。だから・・・中途半端な関係になっちゃうかもしれないけど、今はそれでいいよ」

「よかった」

2人で手を繋いで歩きだしながら、ふと、気になっていたことを私は聞いた。

「ね、健康保険ってちゃんと入ってるの?」

「ん。国民健康保険だけどね。ほら」

「よかった」

胸をなでおろす。怪我や病気はいつ起こるか分からない。

「真由って優しいね」

「そんなことないよ」

そんなこと言われたら、照れちゃうじゃん。

「個人事業主、だったの?」

「いや。履歴書には書かなかったんだけど、ファミレスは、一応店長だったんだ。つぶれちゃったから、そのせいで・・・。まっ、そういうわけで、国民保険に入りなおしたんだ。」

純一がつとめて明るく言う。きっと、まだ、言いたくないことなのだろう。

「いいよ、いいよ、今は、そこまでで」

慌てて言う。

ぎゅっ。

純一は私をぎゅっと抱きしめると言った。

「しばらくこのままでいてくれるかな」

「うん」

純一は声を出さずに涙を流しているようだった。
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