例えば、こんな始まり方
決戦の日
「ブロッサム」まで歩いて行く間、純一は無口だった。・・・何を考えてるの?私は、不安で仕方がなかった。

「純一くん・・・美沙さんとやり直すとか、言わないよね?」

純一は、ふいに立ち止まって真由を抱きしめて言った。

「当たり前だろ。今の僕にとって一番大切なのは真由だ」

そして、優しいキス。大丈夫だ、きっと大丈夫。しばらく歩いて、「ブロッサム」へ。話があるから、と開店1時間前の9時に紗季に来てもらっていた。

「おはよう、中山くん。真由も」

「おはようございます」

「おはよう、紗季姉さん」

紗季はうかがうように、

「で、話って・・・?」

純一が、今までの経緯を詳しく話した。詐欺に遭ったこと、1千万の借金が出来たこと、妻・美沙との離婚が成立しているはずがしていなかったこと、真由に「拾われた」こと、ほぼ、一文無しなこと、僅かなお金は美沙と自分のプラチナリングを売って作ったこと。今は真由を真剣に愛していること、そして、美沙がこの店に乗り込んでくるかもしれないこと。今日にでも。

「ふぅ・・・なかなか重いわね」

紗季がため息をついた。
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