私達は、お隣さん同士でした。

(あゆむ)くん、おはよー」

(あかり)ちゃん、おはよ~」

 そうして手を(つな)いで幼稚園に行きます。
 けれど小学校の入学と同時に、歩くんが引っ越してしまうことになりました。
 私達は泣きました。
 だから、お手紙のやりとりを始めました。
 二人して字の大きさがバラバラでした。
 文も斜めでした。
 それでも私達は数週間に一度、手紙を出し合うようになりました。
 それは途切れることなく続きました。

 私達は、字が上手になっていきました。

 そうして中学校に上がると、電話もLINEもするようになりました。
 だけど一番は、やっぱり手紙でした。
 もらうのも、あげるのも、どちらも落ち着くのでした。

「好きだ。付き合って欲しい――」

 中学二年生の夏、歩くんから告白されました。
 ほとんど会うことのない私に、電話で告白をしてくれました。
 涙が止まりませんでした。ポロポロ ポロポロ……。
 泣き声を聞いた歩くんは、心配してくれました。
 私は大丈夫と伝えて、OKを出しました。
 そして直ぐに感謝の気持ちを(したた)めました。
 同じ頃、歩くんからも届きました。

 ――そうして、高校生になった私達。

「直ぐに良くなるから、待ってて!」

 手術することを歩から聞かされました。
 脳に異常が見つかったそうです。
 私は結果を待ちました。

〈成功!〉

 LINEが届きました。
 けれど電話には出られないと伝えられました。

〈手紙出すから、待ってて!〉

 数週間後、届きました。

「……え」

 その手紙は、やりとりを始めた頃のようなものでした。
 字の大きさが、バラバラでした。
 文も斜めになってました。
 私は手紙を抱えて、泣きました。ポロポロ ポロポロ……。
 だけど悲しくなんかありません。
 だって手紙には、〈すぐによくなるから、まってて!〉と、書かれてあるのですから。

「――いらっしゃいませ!」

 私はアルバイトを始めました。
 歩から「来ていいよ」と言ってくれる日を楽しみに、お金を貯めることにしました。
 そして半年が過ぎた頃、会いに行けることになりました。

「あ、かり。ひさ……し、ぶり」

 歩は、ゆっくりと喋りました。
 歩は、ゆっくりと動きました。

「すぐに……げんき、なるから……まってて……!」

 歩は、約束してくれました――。

 そうして私は大学三年生になりました。
 昼下がりの穏やかな陽気の中、(たたず)んでいます。

「――灯っ!」

 手を上げて、彼が走ってきました。
 私は唇を尖らせ言いました。

「歩、遅い!」

 彼は謝りながらバックから取り出しました。
 
「ほい」

「ありがとう……はい」

「サンキュ」

 私達は手紙を渡し合い、大切に仕舞いました。
 それから、立ち話が始まりました。
 なぜそうなったのかは分からなかったけれど、歩が言いました。

「だから、俺が通信終わって大学入って、ちゃんと就職するまで、他の男の嫁になんかならないで、待っててくれないか?」

 私の世界が輝きました。
 私は答える前に、(うる)んでしまった目で尋ねました。

「歩の、いいお嫁さんになれるまで、待っててくれる?」

 私達は、せーので言いました。

「――待ってる!」

 そうしてあの頃のように、私達は手を繋いで歩いて行くのです。