With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
翌日、この日は恐怖の学力診断テスト。はっきり言って、高校受験終了後、勉強なんて、あっちのけそっちのけだった私は、首を洗って待つ心境で臨んだんだけど、意外と手応えがあった。


「だいたいさ、受験終わってから、わざわざ勉強する奴なんかいないだろ?」


「でも、入学説明会の時、ちゃんと話があったじゃないか。」


「そんなの右から左だろ。」


昨日ですっかり仲良しになった松本くんと久保くんが、こんなことを話しているのを、横で聞いていて、思わず笑ってしまった。


「じゃ、創はちゃんと勉強したのか?」


「一応、簡単な復習くらいはね。」


と言う久保くんの返事に唖然とする松本くん。久保くんは中学時代から、文武両道の秀才なんだもん。でも、この試験に、ちゃんと備えてたっていうのはさすがに驚いた。


「これから長期休み明けは、毎回あるみたいだよ。」


と私。


「本当?定期試験だって、手を焼いてきたのに、更に試験が増えるなんて、たまんないな。」


松本くんの言葉は、実感がこもっていた。


でも終わってしまえば、こちらのもの。いよいよ待望の部活デビュ-が待っている。


「お待たせ!」


更衣室でジャ-ジに着替え、待ってくれていた男子2人に声を掛ける。その声に、何やら話していた2人がパッと私を見る。すると


「いいねぇ。」


と松本くん。


「何が?」


と尋ねると


「別に。さ、行こうぜ。」


とすました顔で言うと歩き出す。


「ねぇ、何?」


と追い掛けながら聞くと


「ミッチャンのジャ-ジ姿が可愛いってことだよ。」


と久保くんの声。


「えっ?」


ビックリして固まる私に


「僕も賛成だけどね。」


そう言ってニコリと微笑むと、久保くんもスタスタ歩き出す。動揺していた私は、フッと我に返ると、慌てて2人を追いかけて、追いつくと


「ねぇ。」


という私の声に、振り返った2人に


「2人こそ、ユニフォ-ム似合ってるじゃん。カッコいいよ。」


「えっ?」


と言うと、今度は2人が固まってしまう。


「お先に~。」


そんな2人の横を、私はいたずらっぽい笑いを浮かべて、すり抜けていく。からかわれたお返しをして、会心の笑みの私は


(カッコいい、だって・・・。)


と茫然としている2人の様子には全然気付いていなかった。
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