With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「ああ、木本。自己紹介させてもらうぞ。3年のピッチャ-の星です。副キャプテンもやってるんで、よろしく。」


そんな空気を敏感に察した星先輩が、取り繕うように挨拶してくれる。


「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。」


「俺は2年の村井誠(むらいまこと)、キャッチャ-やってます。マネ-ジャ-の入部を心から歓迎します。」


続いて、白鳥くんのボ-ルを受けていた村井先輩がそんなことを言ってくれる。そしていよいよ白鳥くん・・・でも彼は知らん顔で、私と目も合わせようとしない。


どうしようかと思ったけど、このままでも嫌なので、思い切って私の方から声を掛ける。


「白鳥くん、だよね。今日からマネ-ジャ-として入部したC組の木本みどりです。よろしくね。」


「ああ。」


でも白鳥くんは、相変わらず私の顔も見ずに、ぶっきらぼうに一言だけ。途端に周囲から失笑とも冷笑ともとれる笑いが起こる。


「白鳥くんに媚び売って、全然相手にもされてないじゃん、あの子。」


「いい気味よ。」


「マネ-ジャ-だか、なんだか知らないけど、白鳥くんに親しげに話し掛けて、なんか勘違いしてんじゃないの。」


媚びって・・・。同じ部活の仲間として、初対面の挨拶しただけなのに、なんで、そんな言われ方しなきゃならないの?他の先輩方はちゃんと挨拶を返してくれるのに、白鳥くんだけ、なんでそんなよそよそしい態度とるの・・・?


思ってもみなかった周りの反応と白鳥くんの態度に、私が戸惑っていると


「木本、水の確認が済んだら、ちょっと備品室の清掃を頼む。」


「は、はい。」


キャプテンが指示をくれる。さっき案内してもらった時、備品室は綺麗だった。西さんが気を遣ってくれたんだろう。


私は一礼すると、走ってブルペンを出る。後ろから嘲るような笑い声が聞こえて来る。悲しくて、悔しくて、涙が出る。
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