With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
そんなことはあったけど、試合開始が近付いて来た。ビジタ-サイドの三塁側ベンチに陣取った私達。


まずは試合前のセレモニ-の1つである先発メンバ-の発表。ベンチ前で円陣を組んだ選手達の視線を集めて、一歩前に出た私は


「それでは、本日の試合のスタ-ティングメンバ-を発表します。」


と告げた。前回の試合ではなかった役割だが、本来はマネ-ジャ-の仕事だそうで


「しばらくマネ-ジャ-がいなかったから、すっかり忘れてた。」


と監督は笑っていたが、たぶん前回は初めての試合であたふたしていた私を気遣ってくれたのだろう。


「1番センタ-大宮 2番ライト東尾(ひがしお) 3番ピッチャ-星 4番キャッチャ-西 5番レフト河井 6番ファースト澤田 7番サード松本 8番セカンド片岡 9番ショ-ト栗田。以上になります。」


こういう時は敬称略だと、事前に言われていたので、先輩も呼び捨てにしてしまったが、私も読み上げの時が初見だったので、ドキドキした。


「よし、準備に掛かろう。」


自身を含めたスタメンメンバ-にキャプテンがそう呼び掛けて、9人が動き出し、残りのメンバ-はベンチに腰を下ろす。


監督は以前、キャプテン以外のレギュラ-は白紙だと言っていたが、実は今日のスタメンのうち7名は前回と同じ。ああは言っていたけど、この7名はほぼレギュラ-当確と見ているのが、伝わって来る。ちなみにキャプテンと副キャプテン、それに東尾さん、澤田さんが3年生、河井さん、栗田さん、片岡さんが2年生。そして注目されるのが我が1年から大宮くん、そして松本くんがスタメンに起用されたことだ。


大宮くんは、そのスピ-ドは正直、先輩を凌駕している。自分でいろいろ言うだけあると、私も認めざるを得ないけど、松本くんのスタメン入りは、その名前をスタメン表で見た時は驚いた。


当の本人もビックリしたように私の顔を見ていた。そして準備に向かう途中、チラリと私を不安そうな表情で見た彼の後ろ姿に


(頑張って。)


私は心の中で声援を送った。


そして、いよいよ試合開始。マウンドに相手校先発の小林雅則(まさのり)が、拍手と白鳥くんには負けるけど、それなりの量の黄色い声援に送られて、マウンドに上がる。


1球、2球・・・ウォ-ミングアップの為に、小林くんが投げ込んで来るボ-ルは速い。彼のピッチングを見るのは三年ぶり。私の記憶にあるそれとは、まるで別人のスピ-ドだった。
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