秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
待ち人来たる

入院生活も二週間を過ぎた頃、臨月に入り退院することになった。

本来ならギリギリまで働くつもりでいたのだけれど、院長を始めとする全員に止められて、出産までゆっくりさせてもらう流れになった。

時間を持て余すようになった私は、最近では暇つぶしにと小園さんが持ってきてくれた毛糸と編み棒で生まれてくる赤ちゃんの帽子を編んだりしている。

腹部はさらに膨らみ、仰向けで寝られず、夜中に何度も目が覚める日々。

もうすぐ会えるのだと思うと、ワクワクが止まらない。

まだ性別を教えてもらってはいないけれど、これだけ胎動が激しいんだもの、きっと男の子だわ。でも無事に生まれてきてくれたら、どちらでもいい。

出産は怖いけれど、会える喜びの方が遥かに大きい。待ってるから、いつでもあなたのタイミングで出ておいで。

そう願ってお腹を撫でると、元気よくポコっと蹴り返してくれた。ここのところよく張るし、もうすぐ会えるのかな。

あれこれ想像しながら、未来への期待を膨らませる。

「さ、今日は健診だからそろそろ出なきゃ」

臨月を過ぎたら健診は関根医院ではなく、出産予定の隣町の総合病院まで行かなくてはならない。

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