俺はその日から沖田の家に居候することになり、まもなく運転手の仕事も始まった。

 鞍馬夫妻と顔を合わせる機会もあったが、彼らは本当に呑気な調子で『子どもたちをよろしくお願いします』と俺に頭を下げた。

 マジで一家そろってお人好しかよ……と呆れつつ、美織の姿を見ても以前のような心の揺れを感じることがなかったことに、俺は内心安堵していた。

 そして平和な日々は過ぎ、子どもたちの送迎にもだいぶ慣れた頃。

「じゃあな、苺、勇海。三時半ごろ迎えに来る」
「はーい」
「遅れんなよ、カツレツ」

 ふたりの通う金持ち学校のそばに車を停めると、一応外に出て、学校の門をくぐっていく苺と勇海を見送る。俺のそばを次々通りかかる同じ小学校の児童たちもまた、育ちのよさそうな子どもばかりだ。

 こんな世界もあるんだな……。俺なんか、小学校すらまともに通った記憶がないのに。

 そんなことを考えながら、車に戻ろうとした時。視界の端で、ふと気になる男女の姿をとらえた。

 長年裏の世界にいた経験からなんとなく普通じゃない空気を感じ取った俺は、顔を上げて彼らの様子を窺う。