「おい、起きろ、みり」
「え……ここは……」

 泣き疲れて眠ってしまった彼女を助手席に乗せたまま、あてもなくドライブすること数時間。俺は千葉まで足を伸ばして、とある海水浴場にきていた。

 今は五月で泳ぐのには早いため、人気(ひとけ)は全くない。

「海だ……綺麗……」

 砂浜に降り立ったみりは、まぶしそうに目を細め、キラキラ光る水平線を眺める。潮風にさらわれる長い髪をかき上げながら微笑む横顔は、実年齢より大人びて見えた。

 ……学校とか、親とか、そういうしがらみさえなけりゃ、こんな綺麗な顔して笑えるんじゃねえか。

「少しは気晴らしになったか?」

 隣に立って尋ねると、みりはこくんと頷いて俺を見る。

「ありがとう。……この景色、死んだら見られなかったね」
「……ああ」

 みりが立ち直ってくれたようで、ホッとしながら内ポケットの煙草を探っていたその時だった。みりのローファーが俺の視界に入り、ふと顔を上げた次の瞬間、目の前にいた彼女に眼鏡を奪われて。

「おい、ちょっと返――」

 せ、と言い切る前に、みりの唇が俺のそれと重なっていた。俺は思考がショートし、身動きも取れない。