メーティスの牙
変わり者の友達
「おい、ちょっと待てよ!!せめて自分の荷物くらい持て!!」

「待たない!助手ならさっさと来い!!」

寄生虫学者である宍戸玲奈(ししどれいな)の助手をしている浜田透(はまだとおる)は、大きなキャリーケース二つを引きながら彼女についていく。自分のものと玲奈のものだ。

寄生虫学者の仕事は、基本的には研究所に引きこもっていることが多い。村田刑事や看護師である飯野美咲(いいのみさき)がいなければ、外に出ることなど全くないだろう。

そんな仕事だというのに、透は数週間前に玲奈から「アメリカに行くぞ」と言われてそのままアメリカのネブラスカ州に連れて来られた。

「アメリカ……。久しぶりだな」

空港を出て、透はポツリと呟く。透は玲奈の助手になる前はアメリカをブラブラ旅していた。楽しく、時々スリルのあったあの旅は透の記憶にしっかり残っている。

「ネブラスカ州には来たの?」

「いや、ニューヨークとかワシントンには行ったけど、田舎の方はあまり来なかったかな。治安とか心配だったし」
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