猫になんてなれないけれど
猫じゃないけど
ふと気がついてまぶたを開けると、カーテンから明るい光が漏れていた。

光の差し込み方がいつもと違う。

ぼんやりとした頭でも、違和感を覚えて寝ぼけ眼で起き上がる。

右、左、そして、真っ白なタオルケットを見た瞬間、私は、「あ」と、昨夜の記憶を思い出す。


(・・・そうだ、ここ、冨士原さんの家だ・・・)


手を伸ばし、真横にあった淡いベージュのカーテンを、ゆっくりと左右に開けてみる。

窓の外は、すっきりとしたきれいな青空。

真下を見ると、色とりどりの住宅の屋根や、大きな公園の眩しい緑が目に入った。


(・・・確かここは7階だもんね。いい景色・・・)


しばらく外を眺めた後で、今度は部屋の中に目を向けた。

当然ながら昨日と変わらず、シンプルな白とベージュの空間だ。

昨日はとても色々あったし、時間が夜ということもあり、この部屋に、寂しさや不安をかなり強く感じたけれど。

今、こうして日中の光の中で見てみると、ただ、シンプルに整っているというだけで、明るくてきれいだという感想しかない。

床とベッドフレームの木の風合いが、柔らかな印象なのも、昨夜には気づかなかったことだった。


(・・・ん?)


ベッドの足元・・・床の上に何かが置いてあるのが見えて、私はベッドの上から抜け出した。

見ると、タオルケットらしきものが丸まっている。冨士原さんだ、と私はすぐに理解した。


(・・・そっか。冨士原さん、ここで一緒に寝てくれたんだ・・・)


まさか、床でそのまま寝たのかな。身体が辛くないといいけれど・・・。

考えていると、段々、昨夜のことを色々と思い出してきた。


(富士原さんの家に来て、バスルームを借りてパジャマを借りて・・・一人でいるのは寂しいからって、寝かしつけてもらったんだっけ・・・)


思い出せば出すほどに、頬がどんどん赤くなる。

もう、だいぶいい歳なのに、子どもみたいに甘えてしまった記憶があった。

ーーー確かにすごく疲れてた。怖かったし、すごく心細かった。

だけど、あんな風に男の人に甘えることは、今までの自分には経験のないことだったから。

一晩経って、冷静に自分の言動を振り返ると、恥ずかしさで落ち着かない気持ちになってくる。
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