「おはよー、花火。今日は早いね」


翌朝。いつもより軽い足取りで校門に辿り着いた途端、背後から寧々ちゃんに肩を叩かれた。


「おはよう寧々ちゃん! 世界は今日も輝いてるね!」


……なんて私が満面の笑みで挨拶を返すと、彼女は「はあっ!?」と素っ頓狂な声を上げる。


「ん? どうかした?」

「いや、びっくりするでしょ⁉︎」


寧々ちゃんは私の背後から隣に移動すると、驚きを隠し切れない顔でまくし立てた。


「だって、昨日までこの世の終わりみたいな顔で登校していた人が、今朝は上機嫌でスキップしながら、『世界が輝いてる!』とか言い出したら、『はあっ⁉︎』ってびっくりするに決まってるでしょーよ!」

「あー、なるほど。それでかー!」

「何? なんか良いことあったの?」

「聞いちゃう? その理由聞いちゃう!? ブッフフフフフフ……」

「花火あんた……その笑い方、私以外の生徒に聞かれたら格好の罵倒の餌食だよ」


寧々ちゃんが言ったそばから、近くにいた男女数人のグループが「聞いた? 今、元姫が変な声で笑ってたよ。キモッ」とクスクス笑いながら通り過ぎて行く。


今朝も月ヶ丘の生徒達は、私に対して辛辣だ。


矢のように突き刺さる視線を向けて来るし、ヒソヒソ悪口を言って来る。しかも、耳を澄ましてよくよく聞けば、悪口の内容が、昨日よりもエスカレートしているような……。


いつもだったら、家に帰りたくなるぐらい嫌な気分になるんだけど――、今の私には視線も悪口もどうでも良かった。
どこ吹く風で何のそのってやつだ。