今思い出しても腹が立つ。


あれはちょうど1ヶ月前。鈴川優花梨が私のクラスに春の嵐のように襲来……じゃなかった。


転校生としてやって来た、1学期の始業式の日のことだった。


窓際から2番目の列の1番前。
彼女に割り当てられたこの席だけが、四方八方からクラスメイトに囲まれていて、ものすごく騒がしかったことは鮮明に覚えている。


「優花梨ちゃんっていうんだ! かわいい名前だね」

「どこから来たの⁉ 前の学校は?」


転校生……? どんな子だろう?


この時何にも知らなかった私は、鈴川優花梨に興味津々だった。


人だかりの外側から何度もジャンプして、中心にいる話題の転校生の顔を覗き見る。すると、びっくりするぐらいかわいい女の子がそこにいた。


初日で緊張しているどころか、いっぺんに質問攻めして来る新しいクラスの子達に嫌な顔一つさえしない。


見ているこっちの気持ちまでふわっとするような優しい笑顔を浮かべ、鈴を転がすようなかわいらしい繊細な声で、自分の周りにいる子達とお喋りに花を咲かせている。


漫画に出て来るような、愛らしい美少女って本当にいるんだなあ。


これは単純に鈴川優花梨が転校生として周りから興味を持たれるどころか、ここにいる全員が彼女と友達になりたいと押し寄せるのもわかる気がする。


というか、彼女と友達になりたいと思ったのは、私も例外じゃなかった。


「あのっ! 初めまして!」


気付けば私も人だかりの中に飛び込んで、鈴川優花梨に話しかけていた。


突然自分の目の前に躍り出て上擦った声を上げる私に、流石の彼女も驚いただろう。


大きな目を更に大きくしてきょとんとしている彼女に、私は仲良くなりたい一心で言葉を続ける。


「私、佐々倉(ささくら)花火っていいます! 良かったら私と友達になってくれませんか⁉」

「うん。良いよ。よろしくね、花火ちゃんっ」

「ありがとう、優花梨ちゃん……!」


いつの間にか、呆然としていたはずの鈴川優花梨は、花のような笑顔を浮かべていて、それを見た私は感極まって泣きそうになった。