ボードウォークの恋人たち

ハルと家族(3)

帰国してから沙乃の様子がおかしい。
引き続き研究発表の手伝いをしてもらっているが、ミスが増えハルがフォローに回らなければいけないことも多々あった。

この先は1人でできるからと伝えても頑なに大学の研究室に留まり続ける。
もう少しだからと研究室のソファーで寝泊まりすることも。しかも一人で置いておくとろくなことをしない。
誤ってパソコンにコーヒーをこぼし、慌てて拭こうとしてコンセントに足を引っかけて解析中の他の機器の電源を落としたとか本当に考えられないことをする。
そのせいで久しぶりに水音との憩いのひと時も邪魔をされ研究室に戻ることになってしまっていた。

ああ、イライラする。今度こそ早急に諸川さんに引き取ってもらおう。

沙乃はぐずぐず言っていたが研究室の鍵を取り上げ無理やり研究室を追い出した。

すると翌日、案の定母から何度もスマホに連絡があった。
もちろんハルは電話に出ない。
夜になり諸川さんから連絡がきた。

こちらの状況を伝えると、今後、手伝いに行かせない代わりに学会発表の場には立ち会わせてやってくれと懇願された。
アメリカの大学の研究室の数人のスタッフ、日本の研究室の医局員と同様に沙乃も協力者の一人であるからそれに異論はない。

そう同意したのだが・・・大きな間違いだった。

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