・・・それにしても広い、このマンション広すぎる。
落ち着かない。
ハルが仕事に出掛けてしまってから私はリビングにひとりでいることができず、ハルに与えられた自室のベッドで膝を抱えて丸まっていた。



あれから他の部屋を案内してもらい、昼ごはんは私の作ったパスタを一緒に食べた。
パントリーにも冷蔵庫にも豊富な食材があったから材料に困ることはなかった。
食後はリビングのソファーに方が触れ合う距離で並んで座り、兄や兄の彼女の話をしたり二ノ宮の病院の話をしているうちに眠くなり、気が付いたらハルにもたれてうたた寝していた。

それからハルは夕方当直のバイトのため出かけて行った。
私が不安そうな顔をしていたからハルも気になったらしく私のことを心配しながらの出勤することになってしまったのは申し訳ない。

結婚とか言っていたけどお互いの部屋は別々だし、二人きりでここに居ても抱きつかれたりキスされたりするわけでもなかったから身の危険は感じなかった。
やっぱりあれはハルの冗談だった。小学生女子のプロポーズだもんねー、言った私が忘れていたんだし。

それよりも自分の身近であった犯罪の話の方が怖かった。

私が知らなかっただけで近所では他にも立て続けに一人暮らしの女性の住居に侵入事件があったなんて。

「何も知らなかったけど昨日の夜は私も危なかったのかな」
そう言った私にハルは驚くべき発言をした。

「水音をそんな危ない目に合わせるわけないだろ。昨日はセキュリティを雇ってあの周辺のパトロールしてもらってたから、もちろん問題なし」

セキュリティを雇って?いやいや嘘でしょ?

冗談だよねと聞いてみたけど、
「水音は何も心配しなくていい」
魔王の笑みを見せつけられただけだった。

何だかいろいろぶっ飛んでいてついていけないんだけど、それでも私に向けるハルの蕩けるような笑顔に黙るしかなかった。

少なくとも今夜ハルが同じ家にいてくれたらよかったのに、と思うほど私のハルに対する警戒心は薄れていた。