ボードウォークの恋人たち
お金があると、それを使っても使わなくても他人は気になるもの。

だから両親は適度に適切な場面でお金を使っていたけれど、子どもたちには間違った金銭感覚を植え付けないようにと育ててくれた。
おかげで周りのお金持ち家庭の子息子女との金銭感覚の相違を早々に感じることができたし、兄妹共に学生時代も親のお金で遊び歩くような生活をすることもなかった。

だから私は就職したら自分ひとりの力で生活してみたくなったというわけで、卒業と同時にひとり暮らしを始めた。初期投資にかかったお金は子どもの頃からの貯金と学生時代のバイトで貯めたもの。
両親も兄も大反対したのに無理やり押し切って家を出たのは私だ。
それでこんなことになってしまったんだけれど。
さすがにちょっとやりすぎたと思う。あのアパートは安くていいと思ったけれど、女性が一人で暮らしていくためにセキュリティは一番大事だった・・・。

・・・現実問題、今お金がない。

就職して2年目の今夏のボーナスで何点か絵画を買った。その絵は二ノ宮グループの病院や福祉施設に飾られている。
その前のボーナスは友人の立ち上げた会社への投資に使った。
だから現在の預金の残高はそう多くない。普通に生活していくのなら月々の給料でこの先も問題なかったはずなんだけど、まさかいきなりこんな出費が必要になるとはなると思っていなかった。

うーん。甘かったなぁ。
次のアパートの引越し費用を考えるとかなり頭が痛い。両親か兄に借りないと無理。
ちなみに両親はまだ海外視察中で日本に帰ってきてない。
兄には何度も連絡をしているのだけれど、ちっとも連絡がつかない。明らかに作為的に私を避けている、彼女と暮らすマンションに突撃してやろうかと思い始めているところである。

ベンチに腰掛けボーっとキラキラ光る穏やかな水面を見ていると、ここ数日の目まぐるしい毎日が嘘のように感じてくる。
このままずーっと現実逃避していたいなぁ。

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