完璧御曹司の優しい結婚事情
課長の懺悔
「おはようございます」

月曜日。
気持ちを新たにして、オフィスに足を踏み入れた。いつもより2本早い電車できたけれど……真田課長は既に出勤していた。机に鞄を置いて、素早く課長の元に行って声をかける。

「課長、おはようございます」

「ああ、川村さん。おはよう」

いつもと変わらない穏やかな笑みを向ける課長に、ほんの少しプライベートをのぞいてしまったせいか、ドキリとする。

「えっと……先日はありがとうございました」

小声でそっと伝えると、課長も少しだけ声を落とした。

「どういたしまして。打ち合わせ通り、その日のうちにタクシーで送ってもらったって言うんだよ」

普段は見せない、悪戯っ子のような笑みに変わるのを見て、胸が高なった。

「は、はい。そうします」

「うん。じゃあ、今日も頑張って仕事しよう」

なんだろう……いつもみんなが騒いでいる〝王子スマイル〟。私はそれを素敵だなあと思うぐらいだったのに、今日はなぜかドキドキしてしまう。



< 61 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop