渇愛の姫
深愛



暗闇の中、遠くから、後ろから、声が聞こえた。



「誰かいるの…?」


深い闇の中、手探りで歩く。





「結愛……結愛…!」


近づく度に胸が熱くなる。

懐かしい声。もう二度と聞けないはずの声。







「お母さん…?」



そこには記憶の中では“ママ”で止まっていたお母さんが立っていた。






「結愛…!」



どれだけ走ってもお母さんには近づかない。

それどころか離れている気もする。




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