「今日会社で落とした小銭を拾ってあげたの。すっごく笑顔の素敵な人!」

彼を思い出して思わず興奮して話してしまうアタシ。

「会社の人?名前は?」

「分かんない。初めて見る人だったから……」

瑞樹に聞かれて彼の事を何も知らないんだと思い知らされる。

「透子は何のために口が付いてるの?そんな素敵な人なら他の女の子達だって黙ってないだろうから積極的に行かなきゃ。」

瑞樹に言われてあの時名前を聞かなかったことを後悔した。王子様が自分だけの王子様になるのは気持ちが通じ合ってから。

アタシは王子の運命の相手に立候補すらしていないのね。

「どこで出会った?何歳くらいのどんな男性だったの?」

大きなため息を吐きながら瑞樹が聞いてくれる。

「四階の中央にある自販機の所。左にある部屋から5~6人の男性と一緒に出てきてた。」

「四階?透子は何でそんな所に行ったの?」

聞かれてギクッとなる。貴方から逃げてたからですとは言えない。

「そういえば今日は会社で一度も会わなかったね。宿題の答えを待ってたのに。」

ああ、やっぱり気付かれた。瑞樹は出した宿題を忘れるような人じゃない。

「ごめんなさい、ごめんなさい。」

体を小さくして瑞樹に謝る。だって分かんないんだもん、夜中の2時までは頑張って考えたんだもん。