美術室のユーレイ



「そ、そうそう!これを忘れてたんだよねー」


私はあたかも最初からそこにあったかのように机の中からペンケースを取り出し、結杏に見せた。


我ながら白々しい演技。


「そうだったんだ」


「う、うん!」


信じてくれたみたい。よかった。




キーンコーンカーンコーン


するとその時18時を知らせるチャイムが鳴った。


結杏がそのチャイムに反応した。


「あっ、いっけなーい!きょう塾があったんだった」


そう言うと結杏は急いでカバンを背負い、


「舞空ちゃん、ばいばい!」


「あっ、うん。また明日!」


美斗くんは見えていないから、私だけに手を振り、足早に教室を出ていった。



結杏、本当になにも覚えてないんだ。


でも、覚えてないほうがよかったかも。


あんなの見ちゃったら一生もんのトラウマだもんね。


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