東京血風録3 キラーズ・コード【改編版】
第3章 起動する未來

転回

状況として。

御業の結界内、摂津秋房、王道遥、藤堂飛鳥、鳳竜堂柊一、龍王院真琴の5人。
遥の持つ、黒檀の木刀の中に剣鬼・伊號丸。
結界外、鬼児の埋められた大鉄と無良、と思しきモノたちが数十人取り囲んでいた。

起動したが、作動しない結界。
遥達は劣勢であった。



結界から出る事もままならない状況で、どうしたものか思案する。
【このまま、戦っても、じゃ】
伊號丸の声が、頭に反響する。



1発の銃声が轟いた。
銃声と理解するのには、一瞬の間を要した。そんな轟音聞いた事無かったから。
カツッ!という弾が弾けた音は、結界の岩の所からした。
結界内の一同は、銃声のした方を見た。
続け様、2発銃声がして飛鳥は頭を腕でカバーした。
2回の弾ける音は、また岩の所でした。
どうやら、同じ岩を狙っているらしかった。が、岩には当たらなかった。

皆が一斉に見た、小高い丘の所には女性が立っていた。腕には銃。銃を握る右手を左手が支える。漸く立っているかのような危うい立ち姿である。
その姿に見覚えがあった。
遥が叫ぶ。
「姉さんっっ!!!」
王道霧華が立っていた。

病室で寝ている筈の霧華さんが何故?
と飛鳥と真琴。
あれが霧華さん?と柊一。

よく見ると、霧華の後方に小さく
男の姿が見えた。
男は両腕を前に伸ばし、指先を少し曲げて小刻みに動かしている。まるでマリオネットを動かすように。
それに気づいた遥が「お前は何を!?」と、叫ぶ。
男は無言。
遥は気づいた。
その男の事を。
霧華の病室へ着いた時、すれ違っていた。あの、カーキグリーンの男。
その男の顔だった。
「姉さんに何をした!?」
力いっぱい叫んでいた。

男は、人を食ったような笑みを浮かべながら「私は傀儡師・暁(ぎょう)と申します。王道霧華さんの依頼により操らせていただいております」と答えた。
霧華は生気の無い顔で立っており、言われれば操られているという表現が似つかわしく、糸て吊られているかの様な姿で立っていた。
「うまくいかねーなぁ」
と、間の抜けた声音の傀儡師の声と同時に、摂津がうごいた。
腕を少し上へ上げると、大鉄と無良の集団が霧華と傀儡師の方へ動き出した。

傀儡師は、右腕を少し動かして霧華の腕を微調整する。銃口が上向く。銃声。
弾が小さな岩の上を掠めた。
ちいっ!と摂津。
遥達は動かなかった。

もう一度、銃声がして岩の中心に当たった。
岩が少し動いた。
かちり。
とも、ぐわんとも。
空気が動いた。


傀儡師・暁は笑っていた。







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