人格矯正メロディ
デート
次のデートは土曜日だった。


いつものように出かける準備をして家を出る。


向かう先は海の家だ。


普段からほとんど外へ出ない海は、外で約束することを嫌う。


働いていないという引け目もあるのか、近所の人に見られるのが嫌みたいだ。


あたしは早まる鼓動を押さえつつ、海の家へと急いだ。


前回のデートの出来事を思い出す暗い気分になるが、今のあたしには『人格強制メロディが』ついている。


これさえあれば、海はきっと優しい人になってくれる。


このアプリを使って以来、田村はあたしに声をかけることがなくなっていた、


それはまるで別人のようで、あたしが目の前を通ろうが横を通り過ぎようが、田村の視界に入っていない様子なのだ。


もっとすごいのは1年生のユズだ。


一見しただけで暗澹たる気分にさせられたあの子が、クラスの中心に立ってみんなを笑わせている姿を目撃していた。
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