前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
先生、私を愛していますか?

 明神先生が私の家族と急きょ食事をした一週間後、約束通り今度は私が彼の実家にお邪魔し、皆で昼食をいただくことになった。

 お父様は眼科の開業医で、本当は先生に跡を継いでもらいたかったそうだが、彼は頑なに外科医の道へ進むのをやめなかったらしい。

 そんな彼の実家は洋風モダンな高級邸宅で、その豪華な建築デザインをひと目見た私はあんぐりと口を開けた。さすがは開業医のお宅だ。

 先生のあとに続いて中へ入り、玄関ホールでご両親と対面した今、私の緊張はピークに達している。


「はっ、はじめまして……! 白藍総合病院図書室の、しし司書をしております、浜菜伊吹と申します」


 噛みまくりの挨拶をして、カチコチになった身体を九十度に折り曲げた。

 滑稽な姿をさらす私に、先生が真顔で「伊吹の脈拍数が心配だ……」とぽつりとこぼす。そのボケに、とても美しく若々しいお母様がおかしそうに笑い、私にも優しい眼差しを向ける。


「堅苦しくなさらないで。私たちは伊吹さんを歓迎しているんですから。久夜が連れてきた初めての女性だもの」
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