転生人魚姫はごはんが食べたい!
人魚の歌
「旦那様! ラージェス様! 私です。エスティーナです!」
しばらくして、旦那様が船から顔を覗かせる。
でもそれは私に応えてくれた訳じゃない。自分の名前を呼ばれたから振り返っただけのことだと思う。だって旦那様は私の顔を見ても何も言ってはくれないから。
そして隣にはあの女性がいる。あまり嬉しくはないけれど、女性の方は私に興味を示してくれた。
「追いかけてきたわね。別に見ていても構わないけれど、邪魔だけはしないでいただける?」
「邪魔?」
邪魔ですって? 私の邪魔をしているのは貴女でしょう!
「簡単なことですわ」
私の憤りには目もくれず、女性は蛇のように旦那様にまとわりつく。まるで見せつけるように、その手に短剣を掲げた。
「旦那様!? 何をするの!?」
私はとっさに叫んでいたけれど、旦那様は剣を突きつけられても眉一つ動かさない。
「何だなんて、お嬢さんだって教わったはずよ?」
見覚えのある短剣がマリーナ姉さんとの会話を思い出させる。
その短剣は旦那様をさすためのものだと言いたいの? なら、人間に戻るための行為を望む貴女は……そうね。金色の瞳に、私の声を封じたのがいい証拠。この人は私が人魚で、歌で人を操れると知っているのよ。
「貴女……あの時の占い師は貴女ね。その節はお世話になったと思っていたけれど、どういうつもりかしら。まさか人魚だとは思わなかったわ」
「あら、よくご存じなのね」
嬉しそうに顔つきで、軽やかな声が響く。何が嬉しいというの? 私はちっとも嬉しくないわ。出来ることなら、貴女には違う形でもうお礼を伝えたかったのに。
「私もね、女神様に愛されたお嬢さんほどではないけれど、昔から不思議な薬を作るのは得意だったのよ。ほら、見てちょうだい! 凄いと思わない? 王子様には私こそが恩人だと思い込ませたの。お嬢さんのことなんて今頃忘れているのよ。それなのにこんな所まで追いかけてくるなんて、健気なお嬢さんなのね」
不思議な薬を得意とする人魚は一人だけだ。
「随分とおしゃべりなのね。海の魔女」
彼女はまた、正解とでも言いたげに笑う。
しばらくして、旦那様が船から顔を覗かせる。
でもそれは私に応えてくれた訳じゃない。自分の名前を呼ばれたから振り返っただけのことだと思う。だって旦那様は私の顔を見ても何も言ってはくれないから。
そして隣にはあの女性がいる。あまり嬉しくはないけれど、女性の方は私に興味を示してくれた。
「追いかけてきたわね。別に見ていても構わないけれど、邪魔だけはしないでいただける?」
「邪魔?」
邪魔ですって? 私の邪魔をしているのは貴女でしょう!
「簡単なことですわ」
私の憤りには目もくれず、女性は蛇のように旦那様にまとわりつく。まるで見せつけるように、その手に短剣を掲げた。
「旦那様!? 何をするの!?」
私はとっさに叫んでいたけれど、旦那様は剣を突きつけられても眉一つ動かさない。
「何だなんて、お嬢さんだって教わったはずよ?」
見覚えのある短剣がマリーナ姉さんとの会話を思い出させる。
その短剣は旦那様をさすためのものだと言いたいの? なら、人間に戻るための行為を望む貴女は……そうね。金色の瞳に、私の声を封じたのがいい証拠。この人は私が人魚で、歌で人を操れると知っているのよ。
「貴女……あの時の占い師は貴女ね。その節はお世話になったと思っていたけれど、どういうつもりかしら。まさか人魚だとは思わなかったわ」
「あら、よくご存じなのね」
嬉しそうに顔つきで、軽やかな声が響く。何が嬉しいというの? 私はちっとも嬉しくないわ。出来ることなら、貴女には違う形でもうお礼を伝えたかったのに。
「私もね、女神様に愛されたお嬢さんほどではないけれど、昔から不思議な薬を作るのは得意だったのよ。ほら、見てちょうだい! 凄いと思わない? 王子様には私こそが恩人だと思い込ませたの。お嬢さんのことなんて今頃忘れているのよ。それなのにこんな所まで追いかけてくるなんて、健気なお嬢さんなのね」
不思議な薬を得意とする人魚は一人だけだ。
「随分とおしゃべりなのね。海の魔女」
彼女はまた、正解とでも言いたげに笑う。