婚約者は野獣
姐さんの突撃訪問
・・・・・・
・・・




ピンポーン


「え?」


このマンションに住み始めて
初めての来客?に固まる

仕事終わりに大吾と合流してスーパーで買い物を済ませて帰ってきて

玄関扉を開けて直ぐチャイムが聞こえたから余計に驚いた


「誰?」


声だけ反応した私と違って
両手に荷物を持つ大吾はリビングまでの廊下を滑るように走った


「・・・っ、姐さんっ」


モニターを見るなり大吾が焦り始めて

少し遅れて覗き込むと、永遠のお母さんが笑顔で映り込んでいた

・・・?


「直ぐ、お迎えにあがります」


応答ボタンを押して、そう言った大吾は買い物袋をカウンターの中に置くとバタバタと飛び出して行った


・・・・・・何?


今朝まで木村組の本家に居た私と大吾

また何か用事かな?と頭を捻ったところで


「どうぞ」


玄関から大吾の声がした


・・・早くない?


慌てて玄関へ向かうと


「千色ちゃん?」


少し訝し気にこちらを見るお母さんと目があった


「はい・・・?」


「なに?先生になる時は変装してるの?」


クスクスと笑って大吾が出したスリッパを履いた姐さんは


「凄いマンションね」


興奮したようにキョロキョロと周りに視線を動かしながら

案内もしていないのに私を通り越してリビングの扉を開けた


・・・えっと


大吾と顔を見合わせて
同じように一度首を捻ってから後を追いかけると


「これ、お土産ね」


ホテルの名前が刻印されたケーキの箱がテーブルに置かれた


「ありがとうございます」


「千色ちゃん、とりあえず着替えていらっしゃい
話はそれからゆっくりするわ」


「あ、はい」


ソファに座りながら大吾へ「お茶」と指示するあたり

どっちが家主か分からなくなってきた







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