婚約者は野獣
背筋も凍る鬼降臨
・・・・・・
・・・




いつも通りに出勤して早々

保健室のスライドドアを開いた瞬間目に飛び込んできたのは

私のデスクに座って笑顔でこちらを見る永遠だった


「・・・おはよう」


そう言って一歩、中に足を踏み入れただけで
息を飲むような緊張感が走った


・・・怒ってる?


こちらを向いたまま笑顔を崩さない永遠から目が離せず


・・・笑ってるのに怖いよ

・・・角が生えてたら鬼じゃん


背筋が凍るような感覚に戸惑う


えーっと・・・


この雰囲気をどうにかしなきゃと思った刹那


音もなく近づいた永遠に囚われた


「キャッ」


軽々と持ち上げられて
連れ込まれたのは三台あるベッドの一番壁際だった


「・・・・・・永遠?」


閉じられたカーテンに息苦しさを感じるけれど

そんなこと言ってる場合じゃない


「昨日何してた」


「・・・?」


「百万回は電話した」


「・・・っ」


今朝起きたらバッグの中に入れたままの携帯の充電が切れていて
保健室で繋いでおこうとそのまま持って来たんだった

その原因が永遠?


「なぁ、携帯の電源落としてまで
昨日は何してた?」


「えっと・・・笙子さんと」


「あ゛?」


・・・ゔぅ・・・怖い


「組長と・・・」


「あ゛?」


・・・近いのに声が大きい


「後藤さんがマンションに来て」


「は?なんだと?」


遂に眉根が寄り
怒りを露わにした永遠に

肩が震えた


「・・・・・・悪りぃ」


私の反応に直ぐ気付いてくれる永遠は
やっぱり優しいんだって思うけど

こういうところが未だ16歳なんだって感じる

でもこの負の感情って
きっと永遠より先にマンションを訪れた三人への怒りに違いなくて


少し嬉しくなった




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