婚約者は野獣
誘拐?命の恩人?


・・・・・・ん


「痛っ」


強烈な頭の痛みに瞼を開いた


「・・・?」


コンタクトを入れたまま眠ってしまったようで

目が乾いてショボショボする

いつもより瞬きを多くしながらも
見えた景色に息を飲んだ


「・・・どこ?」


見えた景色は天井
もう少し情報が欲しくて頭を動かすと


「・・・っ!」

・・・なに?
・・・へ?

どういうこと?
混乱する頭が認識したのは
隣に男性が眠っているという恐怖体験

両手で自分の身体に触れながら
視線を僅かばかり身体へと向ける


・・・良かった、昨日のままだ


泥酔の内に見知らぬ人と・・・なんて
節操もないことは免れたらしい


それにしても・・・

・・・えっと

昨日は繭香とMoonで飲んで・・・

で?どうしたんだっけ?

大吾に迎えを・・・ん?頼んだっけ?
え?嘘、大吾に・・・連絡してない?

てか
繭香は・・・いつ帰った??

記憶を手繰り寄せようとすると
頭の痛みがそれを邪魔する


・・・此処はドコ?


そして・・・この人は誰?

スースー寝息を立てながら眠る男性を
マジマジと眺めてみるけれど

記憶に一欠片も残っていなくて

前髪の間から見える眉がキリっとしてるとか

睫毛が長くて妬けちゃうとか

肌が綺麗だな〜とか


起きたら見知らぬ男性と一つのベッドで寝ているホラーと直面したにしては

緩い頭の回路に
溜め息を吐き出しそうになった時


パチッと男性の目が開いた


「・・・っ」


驚いて身体を離そうと頭を動かしたところで


「痛っ」


強烈な鈍痛に動けなくなった


「おはよ」


「・・・・・・お、はよう?」


「クッ、なんで疑問系?」


「ん・・・と、なんとなく?」


「二日酔い・・・だな」


「・・・うん」


「待ってろ、水持って来てやる」


「あ、りがとう」


「あぁ」


男性はサッと立ち上がると
私の頭をひと撫でして
部屋から出て行った




< 46 / 171 >

この作品をシェア

pagetop