幼なじみの彼とわたし

side 亜衣紗

先週はいろいろあった1週間だった。

恋に気づいたのと同時に失恋。
その相手に胸を貸してもらい慰めてもらった上に寝落ち。
昔からの親友に話を聞いてもらおうと思ったのに、逆に機嫌を悪くさせたみたいだし、おまけに恋の仲介役みたいなのまで任された。
そこは本人同士で何とかしてもらえそうだけど。


はぁ、ここ数年で一番心が忙しかったかも。


でも仕事をサボるわけにも手を抜くわけにもいかないから、気持ちを引き締める。


その日の夕方、定時を5分ほど過ぎた時。


「高森さん、ちょっとお話いいですか?」


2つ後輩の佐原くんが声をかけてきた。
がたいのいい、というか、とにかく大柄な体格で、熊みたいな印象の子だ。

「うん、いいよ」と聞く体勢になるけど、なかなか話し出す雰囲気ではない。
「場所変える?」と休憩スペースに連れ出す。


「あ、あの。僕、入社してすぐからずっと高森さんが好きです」

「…え?」

「僕とつきあってください!」


……!?

目の前には直角になるくらいに頭をさげている佐原くんの姿。
突然のことにびっくりして状況把握するのに必死だ。
佐原くんは新入社員のときから仕事を教えてきたから、なんとなくの性格はわかっている。
真面目で丁寧。
悪いイメージはない。


でも。。。


「気持ちは嬉しいんだけど、ごめんなさい」


失恋したとはいえ、まだ吹っ切れたわけじゃないし。
そんな気持ちで佐原くんとつきあうなんて考えられない。
そもそも、彼をそんな対象に見たこともない。
< 124 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop