Bitter Sweet

第二の親として

「みんなおはよう〜」


「「「「「「おはようございます〜〜」」」」


みんなの張り切ってない声が聞こえる。


チラッと蓮斗を見る。


目が合ってしまった。


すぐに目を逸らす。


蓮斗と付き合って1ヶ月。


月曜日から木曜日は夜電話して、金曜日の夜は私の家か蓮斗の家で日曜日の夜までお泊まりしてまた月曜日を迎える。


その繰り返し。



朝は私の方が起きるのが早いから朝ごはんを作って昼から夜にかけてDVDを見て、一緒に3時のおやつを食べて、夜は蓮斗と一緒に作ってご飯を食べる。そしてお風呂に入って一緒のベッドに寝る。


本当に特別なことはなにひとつしてない。


一緒に蓮斗と外を出たことがない。



生徒がいつどこにいるか分からないという理由と、蓮斗も私もインドアだからそんなに外に出ないことは苦じゃない。


お揃いの物も買ってない。バレないように。


蓮斗が苦しんでないければいいけど。


私と恋をして、いろいろ縛られているはず。


でも蓮斗は咲良ちゃんと一緒にいれるだけで幸せだからって笑顔で言ってくれる。


無理してなければいいし、私も蓮斗と一緒にいるだけで幸せ。


久しぶりに恋をしてるって感じがする。


まぁ、実際しているんだけどね。


胸がキュンキュンするのも、ずっと蓮斗のことを考えてしまうのも、蓮斗に恋をしているから。


でも学校では生徒と教師。


まだ誰にもバレてない。



「えー、連絡は特にありません、今日も1日頑張ろうね〜」


ニコッと笑って教室を出る。


職員室に向かう途中に絵梨花と出くわした。


1年教室から職員室は4階から2階に降りて西から東までずっと歩かないといけないから結構遠い。


正直、一苦労。


エレベーターがあればな〜って何回考えたことか。


「咲良、私さ、昨日雄大と別れたの」


「え、なんで!?」


「雄大の束縛に耐えられないから私から振った。
それに束縛ひどいくせに、キャバクラとか行ってたんだよ?ありえない!」


「そっか〜、また新しい恋探しだね〜」


「咲良こそ恋を探しなさいよ!」


絵梨花には蓮斗と付き合っていることを言わなきゃ。


生徒と教師。


禁断の恋愛でも。


今言おうかと迷ったけど、ここは廊下。誰かに聞かれるかもしれない。


「絵梨花、今日仕事終わったらご飯食べに行かない?」


「咲良から誘うなんて珍しいね、いいよ、行こっか!」


「うん」


仕事終わり。絵梨花と来たのはお寿司屋。


ちょくちょく、家族と来たりしていたが、絵梨花と来たことないから1度は連れて来てみたかった。


「よっ!咲良ちゃん!久しぶり!」


「大将さん、お久しぶりです!今日は大学の同級生で一緒に働いてる絵梨花を連れて来ました〜」


「ようこそ、ゆっくり食べていって〜」


「ありがとうございます」


ここの寿司屋は個室もあって、個室に入った。


「絵梨花なに食べる?」


「まぐろセットとサーモンセット!」


「じゃー、私はえんがわといくらとサーモンで。後は生ビール2つ!」


「はいよ〜」


バイトのおばちゃんが個室から出ていった後


「咲良、なに話したいの?」


「うん?」


「なにか話したいから私を連れて来たんだよね?しかも個室。そんなに大事な話?」


「うん、まぁね」


「当ててあげるよ」


「え?」


「蓬莱蓮斗でしょ?」


「………」


「蓬莱蓮斗と付き合っているんでしょ?言いたいことそれじゃない?」


「なんで分かったの…?」


「蓬莱くんが部活終わりに告白されてたの。それで蓬莱くんが断ったの、それで告白した女の子が聞いたの、なんで?ってそしたら、好きな人がいるから、って。で、なんとなく分かったの、蓬莱くんの好きな人は咲良なんじゃないかって。」


「でも付き合ってるってなんで…?」


「蓬莱くんが咲良のマンションに入っていくところを見たよ、見たのが私でよかったね、他の人だったら今頃どうなってたかな〜」


「そうなんだ…」


「まさかの咲良の久しぶりの恋が生徒とはね…」


「ダメだと分かってる、でも蓮斗のこと好き。」


「私は誰にも言わないよ、でもバレたらどうするの?」


「そうなったら相応の処分を覚悟しているよ」


「本当に蓬莱くんのこと好きなんだね、だめだと分かっても止められないのが恋だもんね…愛情は自分ではコントロールできないもんね」


「絵梨花、ありがと」


「私、何もしてないよ」笑


絵梨花に感謝しながら、大学時代にも行ったお寿司を一貫一貫味わって食べた。
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