軽井沢で生まれたことが嫌だった。夏の軽井沢は、特に嫌いだった。

いつからだろう、軽井沢から出ることばかり考えるようになったのは。

新幹線を使えば東京から1時間ちょっとで戻れるのに 今ではお正月しか軽井沢には帰っていない。

 
「高村くん、ちょっと。」ランチから戻ると課長に声をかけられた。
 
「2時にI商事の人が来るから、高村くん同席してもらえるかな。」
 
「はい。大丈夫です。」
 
「代理店契約のことを詳しく聞きたいらしい。そのあたりの説明を頼むよ。」
 
「わかりました。資料を揃えておきます。」
 

大学を卒業して3年、仕事は順調な方だと思う。

同級生の中にはもう転職をしている子もいたけれど、私は会社を辞めたいと思ったことはなかった。
 

新卒で採用された会社は大手損害保険会社で、毎年人気企業ランキングの上位にはいっている。

配属は一般職だったので 特別、刺激や やりがいは無いけれど、その分競争やプレッシャーも無かった。

目の前の仕事を効率よく丁寧に片付けていく事務作業は、私には合っていると思う。
 
職場には気の合わない人もいるし、理不尽な事もあるけれど“それも仕事“と思うことができた。

逆にそう思える程度の不満でしかないのだと思う。