ノクターン

その夜、私と智くんは 待ち合せて食事をした後、松濤の家に向かった。

マンションの件も ちゃんとお礼が言いたいし、日曜日に軽井沢に行く事も きちんとお願いしたかった。


そして、智くんは 自分の荷物を積んで アパートに車を持って来たいと言った。
 



8時過ぎ、まだお父様は 帰っていなくて。

私達は、お母様とコーヒーを飲みながら ゆっくり話す。
 

「智之から マンションのお部屋を見ないかって言われて 麻有ちゃんの心づかいだって すぐにわかったわ。」

お母様は 優しく私を見つめる。
 
「そんな。お父様とお母様が 良くしてくださるから。本当に、感謝でいっぱいなんです。」

私も素直に答える。
 
「智之、私に感謝してもらわないと。子供の頃、軽井沢に連れて行ったの 私だからね。」
 
「まあね。あの時、麻有ちゃんの家にクリーニング頼んだことが きっかけだからね。」

温かい笑いが 私達の間を流れる。
 


「せっかくだから、日曜日に お部屋見せてもらってもいいかしら。軽井沢の帰りに寄らせて。明日は お父さん忙しいから。」
 

「はい。先に住んでしまって 本当に良いんですか。」私が聞くと
 

「麻有ちゃん、本当に義理がたいわ。そんな事 気にしなくていいのよ。」

とお母様は言ってくれた。
 

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