ノクターン

そして、マンションのドアを開けた瞬間から 私の歓声は 止まらない。

玄関からすべて 完璧にコーディネートされた部屋で 深見さんは 待っていた。
 

「いかがですか。」

と、私の歓声に 満足そうな笑顔で。
 


「素敵過ぎて、住むのが もったいないです。ありがとうございます。」

上ずった声の私を 微笑んで見ていた智くんも
 
「想像していたより、ずっと素敵です。本当に ありがとうございます。」と言った。
 


「住んでみて、もっと気に入って頂けると思います。全てのレイアウトを 生活し易いように工夫してありますので。私の自信作です。」

深見さんも 笑顔で答えてくれる。
 

「本当に、ありがとうございました。」

私達は改めて お礼を言う。


ダイニングテーブルに置かれた アレンジメントフラワーには
 
『CONGRATULATION』

と書かれたカードが 刺してある。
 
「私からの プレゼントです。」

と深見さんに言われて 私の目は 少し潤んでしまう。
 

「どうぞ、お幸せに。」

と深見さんが帰った後で、やっぱり私は少し 涙を流してしまった。
 

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