ノクターン
「麻有ちゃん、何言っているの?麻有ちゃんは 俺と結婚するんで、家と結婚する訳じゃないよ。」
「そうだけど、結婚って家同士の事だよ。智くんのご両親、絶対 反対するわ。」
「しないよ。もし反対されても 俺の気持ちは変わらないし。麻有ちゃんは、俺の運命の人だからね。反対されたら 俺が高村になるから。」
智くんの言葉に、私は号泣してしまった。
「ありがとう。智くん。」
泣きじゃくる私の背中を 智くんは いつまでも優しく撫でてくれた。
「俺ね、麻有ちゃんと付き合うようになって 自分が変わった気がするんだ。」
智くんは、私を抱き締めて静かに囁く。
「仕事もうまくいっているし。同じ事をしても 気持ちに余裕があるんだ。職場でも丸くなったなって言われるよ。」
私はしゃくり上げながら、智くんの言葉を聞いていた。
「なんか最近、回りが見えるようになったんだ。上辺だけじゃなくて。麻有ちゃんと一緒にいるだけで、まわり全部に優しくなれた気がする。」
智くんは 私を包み込むように抱きながら、ポツリポツリと語ってくれた。
「今までの俺って、ずいぶん高慢だったと思う。本気で誰かを守りたいとか思えなかったし。でも 麻有ちゃんに会って、一緒に過ごして ずっと麻有ちゃんといたいって思うようになって たくさんの気持ちがわかったよ。麻有ちゃんのために何かしたいし、麻有ちゃんを失うことがすごく怖いしね。」
智くんの言葉は、よけいに涙を誘う。
「麻有ちゃんと離れるときは、死ぬときだと思っているから。何も心配しないで ずっとそばにいて。」