ノクターン

有楽町で待ち合せて、智くんが向かった宝石店は、ハリー・ウィンストン。

私は驚いて気後れする。
 
「智くん、ここは贅沢過ぎるよ。」
 
「いいの。俺がここで買いたいの。」

智くんに背中を押されて 店内に入った。
 


智くんが選んだ指輪は、桁違いの買い物。

違う世界に足を踏み入れた喜びと、責任の重さ。


そして指輪に負けない人間になろう、と私は密かに誓う。
 


智くんは、買った指輪をそっと私にはめてくれた。


二人で見つめ合い微笑む。


この日までの色々な思いが、私の心を駆け巡る。
 

でも今は幸せだけの時間。


これからの道には、多分困難もたくさんあると思う。


だからこそ今は、この幸せを素直に喜ぼう。


智くんを信じて、すべてを自然に受け止めよう。


 
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