授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
第七章 もうひとりの弁護士
「いらっしゃいませ、あ、これ新商品のチェリーデニッシュです。試食できますから是非召し上がってみてください」

左薬指にはめた婚約指輪を見る度に、黒川さんと婚約したのだという実感が湧く。そして私の毎日は、その指輪のダイヤのようにキラキラと輝いていた。その幸せは隠しようもなく、お客さんとの会話にも嬉しさが滲む。

「ふふ、菜穂ちゃん、顔に“私は幸せです!”って書いてあるわよ?」

「え?」

「結婚は勢いだっていうものね。肌艶もよくなっちゃって! おばちゃんにも分けて欲しいくらいだわぁ。ダイヤなんて、さすが黒川先生ねぇ! 結婚式はいつするの? もう決まってるの? 知り合いにホテルで働いてる人がいるから、空きがあるか聞いてみようか?」

厨房から“喋ってないで仕事しろ”と清隆さんの鋭い視線が飛んできても、弥生さんはお構いなしに乾いた笑いを浮かべる私をはやし立てる。
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