二度目の結婚は、溺愛から始まる
思いがけない繋がり


空は快晴。
初夏を思わせる気温。

バーベキュー日和の天候だ。

今日は、蒼の家で結婚式の打ち合わせと称したバーベキューパーティーが開かれることになっている。

蒼のお嫁さんに見せるために用意した会場デザインは、三パターン。
蓮が予想通りに出張となったため、祖父と食事に出かけた以外は、家に籠ってひたすら描いていた。

自分なりに納得のいくものになったと思うが、昨夜も遅くまで描いてたせいでリビングで寝落ちし、すっぴんにパーカー、ジーンズという姿で、迎えに来た涼の車に乗り込む羽目になったのは想定外だ。


「ほんと、迎えに来てくれて助かったわ。危うく遅刻するところよ」

「椿は、夢中になると寝食忘れて没頭するからね。そんなことだろうと思ったわ。それにしても……いくら蓮さんがいないからって、そのやる気のなさはどうかと思うわよ?」


寝癖をごまかすために、髪をゴムで束ねているとバックミラー越しに助手席の愛華と目が合う。


「べ、べつに蓮がいないからじゃないわよ。寝坊しただけ……」

「椿にひとり暮らしは向かないって、瑠璃が言ってたのもよくわかるわ。誰かがいないと際限なく、だらしなくなるタイプよね」

「そ、そんなこと……ないわよ。ひとりで暮らしてたって、ちゃんと……」


していた、と言いかけて口ごもる。

日本を離れてから六年ほどひとり暮らしをしていたけれど、ジーノと瑠璃が住む隣のアパートで、瑠璃の抜き打ちチェック付き。毎日の食事は、朝昼晩とも彼らと彼らの子どもと一緒。

そんな状態を完全なひとり暮らしとは言い難い。


「椿は高飛車なお嬢さまに見えて、相手に尽くすタイプだからね」

「おい、愛華。尽くして相手を振り回す、のまちがいだろ? 椿は、どう見ても大和なでしこじゃない。三歩下がって付いていくんじゃなく、引き綱を無視して、好き勝手に走り回るタイプだ」

「涼っ! わたしは、犬じゃないわっ!」

「あながち、まちがいではないけれど、好き勝手に走り回っていたことに気づいて、慌てて戻って来る可愛げはあるわよ」

「蓮さんは、心が広い大人だからな。バカな子ほどかわいいと思ってるんだろうなぁ」

(ば、バカな子って……そんなこと……思ってるわよね。たぶん……)


昔ほどではないけれど、蓮にはまだまだ子ども扱いされている。
これから挽回すればいいとわかっていても、客観的に指摘されると落ち込む。

< 141 / 334 >

この作品をシェア

pagetop