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「相変わらず、素直じゃないな。椿は」


涼は深々と溜息を吐いて、わたしの頭を撫でた。

堪えていたものが、どっとあふれ出し、止まらなくなる。


「今夜は、とことん飲もうよ? 椿」


もらい泣きしている愛華の言葉に、涼が乗る。


「おう、飲め飲め!」

「うん……飲む……」

「わたし、焼酎にしようかな」

「俺も。椿は?」


おしぼりで目元を拭い、テーブルの上のチャイムをバシッと叩く。


「……生ビール。ピッチャーで」

「はいは……ピッチャー?」

「日本のビールは軽いのよ」

「ワインじゃなくていいのかよ?」

「ワインは水だから」

「……左様ですか」




宣言どおり、わたしはとにかく、飲んだ。



飲まずには、いられなかった。



ビール、焼酎、ワイン、カクテル……メニューを一巡した。

こんな無茶な飲み方をしたのは、学生の時以来だ。

ザルと言われるほどお酒は強いが、そこまで飲めばさすがにシラフではいられない。突然泣いたり笑ったり。完全な酔っ払いだと自覚しながら、愛華のふかふかの胸に頬ずりする。


「どうしてこんなにちがうの? 同じ女なのに。不公平よ!」

「その人に似合う大きさってものがあるんじゃないの?」

「ねえ、大人になったら成長すると思う?」

「いや、もう、十分大人でしょ」

「でも、大人なのに大人扱いされないのよ。いっつも、余裕って顔してて……ムカツク」


ことあるごとに、わたしを子ども扱いしていた人の顔を思い出す。


「余裕あるフリをしてるだけだと思うけどな?」

「手加減してくれてたんだと思うけどね? 椿は、初心だし」

「ちがう……妹みたいなものだったのよ」

「バカ。妹とセックスはしないだろ」

「嫌い……わたしを好きじゃない男は、みんな嫌い!」

「はいはい……相当な酔っ払いね」

「いい加減、帰すか。椿、いまの宿はどこだ? 母親のところか?」

「柾の家」

「電話しろよ。迎えに来てもらえ」

「怒られるから、イヤ」

「おまえがしないなら、俺がする」


テーブルの上に置いていたスマホを取り上げられそうになり、慌てて確保した。


「もっと怒られるから、イヤ! ねえ、送ってよ?」

「ヤダね。いまのおまえの状態じゃ、タクシーに乗車拒否されかねない」

「じゃあ、二人の家に泊めて?」

「断る。俺も愛華もパートナーがいるし、たとえ相手が椿でも、誤解を招くようなことは一切したくない」

「冷たい……わかった……柾、呼ぶ」


さんざん世話になっている二人の幸せを壊すような真似は、できない。
もうろうとしながら、電話帳で兄の名前を探し、電話を架けた。


「もし、もーし……」



『……椿? こんな時間にどうしたんだ?』