悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 目を閉じ、大きく深呼吸をした。それから、再び鏡を見つめ、数度瞬きを繰り返す。
 それでもなお信じられず、首を横に振り、もう一度目を閉じてから鏡を見た。だが、鏡に映る姿は、最初に見た時と全く変化していなかった。

「……どういうことっ!」

 これは、七歳か八歳の頃だろうか。見覚えのある幼い少女の顔が、正面からこちらを見返していた。
 緩やかなウェーブを描いて肩に流れ落ちる黒髪、黒いダイヤモンドのごとく、きらめく瞳。頬は、子供らしく薔薇色だ。整った容姿は、今は驚愕の表情に固まっていた。

「お嬢様、お目覚めですか?」

 侍女の声に、レオンティーナははっと振り返った。
 入ってきた侍女の顔には見覚えがある。
 母に仕えている侍女――いや、仕えていたが正解だろうか――だ。子供の頃のレオンティーナは、彼女になついていた。

「鏡の前で、どうかなさったのですか?」
「う、ううん……目がちくちくしたのよ。ごみが入ったのではないかと思って」

 できるだけ子供らしい仕草で首を振り、侍女の顔を見上げた。

「まあ大変! 私に見せてくださいませ」

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