悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 前世では、食料不足に陥るのはレオンティーナが十七歳を超えた頃だったが、マレイモが栽培されるようになっているし、国外から食料を輸入する体制も父に頼んで完成しつつある。
 未来が変わったであろうことを知っているのはレオンティーナだけだったけれど、ヴィルヘルムは笑ったりしなかった。
 そんなヴィルヘルムだから、きっとレオンティーナも彼のことを好きになったのだ。

「でも、今は私じゃなくてもいいと、そう思っています。同じものを見て育ったあなたならきっと、私が望んだ国を作ることができます。だから……」

 ヴィルヘルムと初めて顔を合わせたのは、ソニアを探しに行った養護施設だった。施設長の嘘を暴いたレオンティーナを、ヴィルヘルムは感心した目で見てくれた。
 マレイモの栽培計画にしても、ニナ草の栽培方法の確立にしても。レオンティーナが何を考え、どうしてその行動をとったのか、ヴィルヘルムは知っている。

「私は、あなたが大切なんです……」

 どうして今、そんなことを口走ってしまったのだろう。
 けれど、自分の命は大切にしてほしい。ヴィルヘルムに、その言葉は伝わったと信じたかった。
 
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