エリート御曹司が花嫁にご指名です

八、変わりゆく生活

「宮本さん。おはよう」

 就業前、ちょうどカフェスペースに姿を見せた宮本さんに私は声をかけた。

「一条さん、おはようございます」

 彼女はいつものように笑顔で挨拶する。昨日の件が恥ずかしい私だけれど、もう一度、彼女に謝ろうと思っていた。

「宮本さん、昨日はびっくりさせてしまってごめんなさい」
「い、いいえ。私こそお邪魔してしまって……」

 彼女は手をぶんぶん振った。顔を赤らめたのは、昨日のことを思い出してしまったせいかもしれない。

「ううん。就業後でも、あんなことをしてはいけなかったの。本当にごめんなさいね」
「桜宮専務は、キス魔なんですね」
「ど、どうかしら……」

 キス魔って、一度見ただけなのに、そんなことを言うの?

 ふい打ちの言葉に戸惑う私だ。

 彼女は困惑した表情を見せて、足元を見てから心を決めたように顔を上げた。

「一条さん、西尾さんに気をつけてくださいね。私……」

 宮本さんは下唇を噛んで、口ごもる。

「気をつけて、って……? どういうこと?」
「……私、桜宮専務と西尾さんが、抱き合ってキスしているところを見てしまったんです」
「えっ……」

 私は驚きで目が大きくなった。

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