俺と、甘いキスを。
右京蒼士の専属?

二月十四日が金曜日で本当によかった、と胸を撫で下ろす。
一頻り泣いたあの夜、酷い顔で帰宅してすぐに部屋に引きこもってぼんやりしていたが、いつの間にか寝てしまい、気がついたら窓から明るい日差しが入ってきていた。

休日は気持ちを落ち着ける、必要な時間だった。

週明けの月曜日。出勤すると、受付のカウンター辺りで数人の女子社員が集まっている。事務所はその奥になるので、私はそろそろと廊下の隅を歩いて通り過ぎようとした。

「さすが、イケメンの右京兄弟は目立つわね」

「右京」の言葉に、ギクリと心臓の縮む感じがした。
「お兄さんの右京専務が来ているなんて、珍しいよね」
始業前に本社の右京蒼士の兄、右京誠司が来ているのか。彼女たちは二人の話で持ち切りだ。

「兄弟でもイメージが全然違いますよね」
「一昨年専務に昇進した兄は、身長が高く華やかで背中から後光を放っている感じなのに、弟は身長は人並みで物腰柔らかで神秘的な感じよね」
「どちらもイケメンだから、魅力的でステキですよね」
彼女たちは揃って、ピンク色のため息を吐く。
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