シンフォニー ~樹
3

絵里加を 一人の女性として、好きだと思ったのは、絵里加が 中学生になった頃だった。

その頃から絵里加は、急に大人っぽく 眩しくなった。


翔から、学校で 絵里加の美しさが話題になっていると言われて、樹の胸は熱く騒いだ。



絵里加自身は、何も変わらずに “タッ君、タッ君” と、後を付いて来る。

ただ無邪気で無防備で。

安心し、信用しきっている絵里加を、壊したいと思うことさえあった。


不安定な年齢の自分を、持て余していた。
 


明るく楽しい性格、長身で 優しい顔立ちの樹に、近付いてくる女の子は多い。

でも どんな女の子も、絵里加には敵わない。

気立ての良い女の子でも、絵里加と比べると霞んでしまう。


ただ絵里加を抱きしめたい。

自分だけのものにしたい。



密やかに思う恋心は、胸を離れることがないまま、樹を苦しめ続けた。
 


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