愛溺〜番外編集〜

彼女の正体




タクシーの中である程度互いのことを話し、緊張感が解れたところで家に着いた。


「愛佳ちゃんは、一人暮らしなの…?」
「うん、実はそうなんだ」


一人暮らしだと知って少し驚いていた未央ちゃん。
けれど特に深く聞かれることはなかった。


未央ちゃんを家に上げ、飲み物を出す。

最初はご飯でも作ろうかと思ったけれど、まだ時間的に早かったため、それはやめた。


「じゃあさっきの男は未央ちゃんの彼氏なの?」
「う、うん…」

ようやく落ち着いたところで、先ほどの話に戻した。
どうやら危険だと思った男は未央ちゃんの彼氏だったようだ。


もしかして暴力でも振られているのかと不安に思ったけれど。

ようやく未央ちゃんから事情を聞くことができた。


「その、元カノ…って、いうのかな、前に関係を持ったことのある女の人が急に話しかけてきて…それで、色々言われて、こんな自分が嫌になって…神田くんの前から逃げてきちゃったの」


神田くん、とはおそらく彼氏の名前だろう。
悲しそうに顔を歪める未央ちゃんの頭を思わず撫でた。


「自信なんてなくて、だからさっきも辛くて神田くんの元に行けなかったの。ごめんなさい、こんなくだらないことに巻き込んじゃって…」

「くだらなくないよ」
「え…」

「元カノとかって、やっぱり辛いよね」


私もよくわかる。

涼介はたくさんの女の人たちと関係を持っていたため、キスやそれ以上の扱いにも慣れている。

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