悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
私の花壇を守って

 国境警備隊は、今日もゆるゆると国境の警備に出かける。

 とはいえ、ほぼ他国に責められる心配がない国境なので、巡察に裂く人数は最小限に絞られていた。

 他の者は、家畜の世話、炊事洗濯、掃除、市中見回りなど、様々な仕事をこなす。

「てめえら、それでも男か!」

 雷鳴に似た怒号に驚いた家畜たちが騒ぎ出す。

 厩舎の近くでは、集まった隊員たちが木刀を持って剣の鍛練をしていた。

 ひいひいと悲鳴に近い息をする隊員たちをしごいているのは、副長・ジョシュアだ。

 日々の仕事で運動量は足りているが、もし国境が脅かされた時に役に立たない警備隊では仕方ない。

 そう考えたアリスの要請で、ジョシュアが剣術を隊員に教えることになった。

 最初はしぶしぶだったジョシュアも、剣を振るううちに昔の感覚を思い出しているようだ。

 二カ月ほど前、彼は一念発起してアルコールを断ち、アリスの言う通りの規則正しい生活と治療に専念した。

 今では腹水が溜まることもなく、禁断症状も出ない。痛みもなく、吐血もしていない。症状が落ち着いているどころか、すっかり元気になった。

< 125 / 215 >

この作品をシェア

pagetop