ぜんぜん足りない。
ぜったいバレない。
.

.


いつもなら、ぽーっとキスの余韻に浸ってるところだけど、今回はハナシが別。



「こおり君、ねえっ、それ」

「はあ? なに」


「コンビニの袋、プリン入ってる、けど」

「………」


わたしのプリン好きは、こおり君もきっと知ってるはず。いや、絶対知ってる。

知らないわけないの。

こおり君に「何食べたい?」って聞かれたときは、絶対「プリン」って答えてるから。



「それ、コンビニの中でわたしが1番好きなプリンだよね?」

「種類までは覚えてない」


「それが1番好きなの。前に言ったじゃん」

「そーだっけ」

「そうだよ。……だから、買ってきてくれたんじゃないの?」

「……うん」



直後、その「うん」に頭の中でエコーがかかる。
ぎゅっと心臓を締めつけて、鼓動をどんどん速めていくんだ。


こおり君と話してると、自信を無くすのも一瞬。

自惚れるのも一瞬。

疲れるのに、離れたくない。



「でも、桃音にはやんないよ」


薄く笑って、わたしから距離をとる。

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