年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
第一章


 ――カラン、……カラン。

 舌の上で転がせば、歯にぶつかって、カランと澄んだ音が上がる。
 けれど幾度転がしてみても、口内のそれは舌に味を伝えない。

 ――カラン。

 最後にもう一度転がして、唾液に濡れたそれを口の中から摘まみ出した。指先に摘まんだまま日に翳せば、日を弾きキラキラと光る。
 淡い色味の小さなトンボ玉は、見た目には、まるで飴玉のようだ。
「ふふふ。……だけどやっぱり、トンボ玉じゃ甘くはないね」
 それでも、私は空腹を誤魔化す為に、しゃぶらずにはいられなかった。
 空腹に胃腑がキリキリと痛み、食道から喉の奥にかけて不快に張り付くような感じがした。
「今日こそ朝食に呼ばれたりしないかな」
 ポツリと呟いて、けれど次の瞬間には、それは難しいだろうと思い直す。
 お母様のあの感じだと、今回もまだ無理だろう。
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