理玖に言われて私は自分の右手に注射痕がある事に気付いた。

「倒れてから三時間は寝てたから、もしかしたら今晩眠れないかも知れないな」

 理玖の言葉に、私は身体を起こそうとすると、理玖が介助してくれた。

「叔母さんに、史那が目覚めた事知らせてくるよ。
 果穂が枕元で騒がしくして史那がゆっくり休めないだろうって言ってリビングに居るから。
 何か欲しいものあるか?」

 頭がぼんやりしていて、何故ここに理玖がいるのか理由がわからない。
 それに、こんなに話をする事すらなかった私達なのに、何でこんなに世話を焼いてくれるのか……。

 欲しいもの……か。
 そんなの、理玖の心に決まってる。
 でもそんな事は、口が裂けても言えない。言っちゃいけないんだ。

「理玖……」

「ん? 何だ? 水でも飲むか?」

 私の呼ぶ声に、優しく答えてくれる理玖。
 点滴のおかげなのか、喉の渇きは感じないけれど、身体が怠い。

「体温計……、良かったら、持って来てくれるかな……?」

 体調が悪いせいか、まだ身体も怠いし、喋るのもしんどく感じる。
 これが倦怠感と言うものだろうか。今までに経験した事のない怠さだ。

「分かった。熱があるなら家庭教師はまた日を改めるから。ちょっと待ってろ」

 理玖が部屋を出て行って、ぼんやりとした頭に残った言葉を復唱した。

『家庭教師』って、理玖の事だったんだ……。