母から体温計を渡されて、腋の下に挟むと、反対側の腕で果穂の頭を撫でてやる。
「ありがとう、果穂。
お姉ちゃん、お熱計ってみて、お熱あったらもうこのまま寝るから遊んであげられないけどごめんね」
「うん、分かった。早く元気になってね」
健気な果穂が可愛くて、頭を撫でていた手で果穂をギュッと抱き寄せた。
母はそんな私達のやりとりを見守ってくれている。
体温計の電子アラームが鳴り、計測が終了した事を告げている。
私は腋の下から体温計を取り出して、表示を確認した。
「三十七度三分……、微熱だね」
体温計をケースに仕舞おうとした時、理玖がスポーツドリンクのペットボトルを片手に部屋の中に入って来た。
「これなら飲めそうか? って叔母さんごめん、勝手に冷蔵庫漁って」
「いいのよ、そんな事気にしなくて。
それよりごめんなさいね、理玖くんも忙しい中せっかく時間に都合つけて家庭教師に来てくれてたのに……」
「いや、体調崩してるのに勉強やらせる方が鬼だし」
母に向かってそう言ったかと思うと、私の方に向いて有無を言わせぬ口調でこう言い放った。