何故、理玖はメッセージを? 理由が知りたい。でも……。
 とりあえず、この試験会場を出てから場所を変えて一度落ち着こう。
 きっとそれからでも遅くない。
 買い物をしていたからスマホの電源を落としていたとでも言い訳すればいいだろうか。

 今日着ている上着は、リバーシブルのジャンパーだ。一応、ここを出て、何処かのトイレに入ってから念の為これも逆にして、伊達メガネも外し、髪の毛もいつもの様に括ればきっとバレない筈だ。

 まだここから動くには危険だ。
 私はとりあえず二十分トイレの中でじっと我慢し、完全に人の声が聞こえなくなったのを確認すると、試験会場を後にした。

 試験会場は駅前にある。
 駅ビルの中に入って、私は奥の目立たない場所にあるトイレに駆け込んだ。
 上着をリバーシブルに着直して、髪の毛をいつも通り耳の下でツインテールにする。
 伊達メガネも外してリュックの中に仕舞い込み、変装を解きいつもの私に戻すと、トイレから出てビル内にある休憩室へと移動した。

 ようやくベンチに腰をかけ、スマホを取り出して理玖にメッセージを送信する。

『ごめん、買い物に出ていて気付かなかった。何かあった?』

 私がいつも使っている猫の絵のスタンプもダメ押しで送ると、すぐに既読がついた。
 そして……。
 突然私のスマホが震えた。

 着信音を切っているから、代わりにバイブ機能が作動しているのだ。
 待ち受けの液晶画面から、着信画面に切り替わる。

 画面に表示されていたのは、理玖の名前だった。