お互いの存在を確認した以上、通話状態にしていても意味はない。理玖は通話ボタンを切ったのか、私のスマホの画面が待受画面に切り替わっていた。

「買い物か?」

 必死に言い訳を考えていたけれど、理玖の一言で思考が止まった。
 これは渡りに船かも知れない。話を合わせておいた方がいいだろう。私は頷いた。

「友達は? って、この場にいないんだから、もういいよな? ちょっと付き合え」

 理玖はそう言って、私の左手を掴むと歩き始める。
 私は理玖に従って後ろをついて歩くも理玖は歩を緩め、気が付くと私は理玖と並んで歩いていた。

「ここなら別に人の目を気にする事はないだろうけど、気になるならこれ被っとけ」

 そう言って理玖は私に帽子を手渡した。
 季節先取りのニット帽で、ブルー系の可愛い物だった。

「俺、被り物似合わないから、それやるよ」

 いつかのハンカチの時の様に、物に執着心のない理玖に、私の心は複雑だ。
 ここで突き返しても、きっと理玖は受け取らないだろうし、かと言って素直に受け取ってもいいのだろうか。
 それにこれ、理玖が被るには少しサイズが小さい様な気がする。